気功がスピリチュアルな価値観に及ぼす影響―タイプA行動様式変容の視点から

ronbun9原著論文 日本トランスパーソナル心理学/精神医学会誌
「トランスパーソナル心理学/精神医学」Vol.9, No.1, July, 2009(2009.7.31発行)抜粋

*濁川孝志(立教大学コミュニティ福祉学部)
 大石和男(立教大学コミュニティ福祉学部)
 安川通雄(専修大学社会体育研究所)
 佐藤眞志(佐藤気功センター)

はじめに

現代社会におけるスピリチュアリティの重要性とタイプA行動様式

現在の日本は、医療や公衆衛生の進歩によって伝染病や乳児死亡率が大幅に減少した結果、世界一の長寿国となった。しかし一方で世相に目を向けると、青少年犯罪の凶悪化、ニート、引きこもり、3万人を超える自殺者など“心の病”が関連するとしか思えないような社会問題が多発している。これはPIL研究会が指摘するように、これまで我々が歩んできた日常的な衣食住・蓄財に関わる欲望の充足、すなわち物質的な価値観ばかりが注目された結果として、生活水準は向上し物質的欲求は満たされつつある一方で、生きる意味や目的意識が失われた結果なのかも知れない。その一方で、近年、スピリチュアリティという言葉が、医療や福祉の現場を中心にいろいろな場面で用いられるようになってきた。その背景には、現代医療や福祉活動の現場で“生命の尊厳”の重要性、すなわち「ただ命を永らえる」ことではなく、「いかに与えられた命を生き抜くか」という“生き方の質”の重要性が認識されてきたという状況がある。とりわけホスピスケアやターミナルケアの領域においては、痛みなどの身体的苦痛、不安や抑うつといった精神的苦痛、経済問題や家族間の問題という社会的苦痛のみならず、人間存在としての意味や価値に深く関連したスピリチュアルペインが重視されるようになってきている。このような社会的潮流の中、2000年のWHOの執行理事会においては、健康に関わる要素として、“スピリチュアリティ”の重要性が議論され、この種の動向の世界的な広がりが示唆された。