「佐藤式気功とスピリチュアリティの変化」 立教大学コミュニティ福祉学部教授 濁川 孝志さん

濁川先生は生理学、健康科学、体育学、精神神経科学などの諸分野で研究成果をあげてこられました。今回は、佐藤式気功のもたらす精神面への影響に着目し、その効果を「PILテスト」を導入し、客観的に評価していただきました。

佐藤式気功との出会い

『体外離脱を誘発する気功法があるそうです』と友人から聞いたときは、一瞬耳を疑った。
『体外離脱っていうのは、臨死体験者がよく言う“自分の身体から魂が離れて行く”アレのことか』
『はい、その体外離脱です』
『・・・』

僕は、もともとこの種の現象には凄く興味がある。おおよそ超常現象と呼ばれているものは、現在の科学で解明できないだけで、確実にあるに違いない。テレビだって携帯電話だって、江戸時代の人間に見せれば超常現象である。それに有名大学の教授でもある彼は、いい加減なことを言うような人間では断じてない。

『とにかく一度、その気功を体験してみませんか』

誘われるままに、僕は半信半疑で佐藤気功センターを訪ねた。秋の日の日暮れ時だったと思う。
佐藤先生は笑顔を絶やさない温厚なお人柄で、僕らはリラックスした雰囲気の中、佐藤式気功を受けることができた。結果、友人は体外離脱までは行かないが、スピリチュアルな感性を伴う不思議な世界が見えたという。僕は、残念ながらこの種の感受性が弱いらしく、身体が温かくなったり、涼しくなったりはしたものの、そのような興味あるイメージを体感することはできなかった。しかし、施術後は身体がぽかぽかと暖かく、とてもゆったりとした気分になったのは事実である。

心の病の時代と気功

現代は、心の病の時代と言われる。同時にストレス社会とも呼ばれる。ニート、引きこもり、年間3万人を超える自殺者、青少年犯罪の凶悪化。どれをとっても、心理的なストレスや心の不安(闇)が関連した現象としか考えられない。先の終戦から半世紀以上に渡って物質的な繁栄ばかりを追求してきた結果、今の日本では、生活水準は向上し物欲は満たされつつある一方で、生きる意味や目的意識の喪失という新たな問題が浮上しているように見える。その結果が、上に書いた諸々の問題と関連しているように思えてしかたがない。このような世相を反映してか、現在、物質至上主義的な社会における全人的QOL (Total Quality of Life) を求める動き、つまり「生きがい」や「信念」などスピリチュアルな感性も含めた総合的な生活の質の向上を志向する動きが高まっている。そしてこのスピリチュアルな感性を高める可能性がある手法として、禅やヨーガによる瞑想体験、特定の宗教の信仰などによる自己の霊性への目覚め、さらには気功によって得られる“天地人合一”の感覚などが指摘されている。つまり気功には、人間のスピリチュアルな感性を高め、僕らを“心の病”から開放してくれる可能性が秘められているのである。

佐藤式気功がもたらすピリチュアリティの変化

佐藤式気功の人体への影響に関しては、これまで複数の研究者によって検討がなされている。それらを概観すれば、佐藤式気功は受け手の自律神経系(皮膚温、心拍数など)、内分泌系(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)、免疫系(NK細胞、CD4/CD8など)、脳波などへ明確な影響を及ぼすというものであり、概ね受け手の副交感神経支配を優位に導き、ホルモンバランスを整え、免疫能を向上させるということになる。つまり佐藤式気功は、そのメカニズムはともかく、受け手を精神的にリラックスさせることができ、それと同時に免疫機能を活性化させる。その結果、受け手の身体のコンディションを良好に導く。つまり“からだに良い”のである。

佐藤式気功のもたらす身体への影響はある程度解明されたとして、では心への影響はどうなのか。上で述べたような、人間のスピリチュアルな側面へも影響を及ぼすのだろうか。例えば、個人の“生きがい感”や“死生観”などに影響を与えるのだろうか。この点を検討するために、我々は質問紙により、気功前後の受け手の心の変化を観察した。質問項目は、人間の“実存的虚無感”や“生きがい感”に関わるとされるPILテストから20項目、さらに死生観に関わる項目として飯田のブレークスルー思考から著者らがアレンジした5項目を用いた。

結果は予想を遥かに超えるものであった。細かい分析結果はここでは割愛するが、全ての項目で、有意な変化が見られた。

「生きる力がわいてくる スピリチュアル気功」より引用 佐藤眞志著 ハート出版