精神神経免疫学による「情動ストレスと内分泌」

遠隔送気時において対面時と同様な変化が認められ、遠隔送気により受信者に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。
『without peer-review Vo1.19,No.1 March 2001 ISSN1341-9226』より抜粋


「遠隔送気における内分泌動態」
 気功法の異なるレベルの高い気功師3名により遠隔送気を行い、約2~4km離れたそれぞれ2名ずつの受信者における静脈血中のコルチゾール、アドレナリン、ドーパミン、βエンドルフインなどの変動を測定した。遠隔送気40分後において血漿コルチゾール及びノルアドレナリンが有意に減少し、アドレナリンも減少傾向を示した。これらのことから受信者はストレスが緩解し、リラックスし、交感紳経活動水準が低下していることが考えられる。遠隔送気時においても対面 時と同様な変化が認められ、遠隔送気が受信者に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。
Keywords: Remote qi emission, conrtisol, adrenaline, noradrenaline, β-endorphin, dopamine

1.情動ストレスとホルモン分泌

精神紳経免疫学は、情動ストレスが大脳辺縁系を興奮させ、視床下部で多量 のホルモンが放出したとき、自律紳経系や内分泌系および免疫系に与える影響を研究する学問である。視床下部は、心臓や内臓の働きを調節する自律紳経系とホルモンを通 じてからだ全体の働きを整える内分泌系をコントロールする脳の部位である。

大脳辺縁系に情動ストレスが伝わったとき大脳辺縁系、特に扁桃体が興奮し、その情報が視床下部に伝えられる。(大脳辺縁系からは、怒りのときに出るアドレナリンや恐れや驚きのときに出るノルアドレナリンが神経細胞のシナプスから放出される) 視床下部からは、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが放出され、1つは脊髄を経て自律紳経系の交感神経を刺激する。そのとき、交感紳経の末端からノルアドレナリンが分泌され、交感紳経が支配する副腎髄質からはアドレナリンが放出される。

2.本来の緊急反応が慢性化していく

元来、両方の物質ともに敵に出会った緊急反応の際に放出されるもので、心臓の筋肉に直接作用し、血流をからだに送るポンプの力となる収縮力を高めたり、心拍数を大きく上げ、からだのシステムの総力をもって危険に立ち向かっていくものであった。

しかし、慢性的な不安や緊張、恐れや怒りといった情動反応は緊急行動への調節を離れ、身体の恒常性をかき乱す結果 しか生まない。結果、交感神経の機能が亢進し、血管を収縮させ、血圧を上昇させる。同時に内分泌系でも、副腎髄質が刺激された結果 アドレナリンの分泌が進んで、同じように血管を収縮、やはり高血圧の状態に導く。

一方、ストレス刺激を感知した脳の視床下部・脳下垂体からは体へ向かって神経内分泌ホルモンを媒体とした情報が送られ、それが副腎皮質に作用してコルチゾールと呼ばれる物質を放出する。 コルチゾールは、強力な抗炎症・抗ショックの作用をもち、一時的には全身をさまざまなストレスから守る物質である。

たとえば、病原菌やウイルスが体内に混入したとき、免疫反応による反撃が行われるようになるまでは時間がかかる。この間にコルチゾールはストレスから生体を守り生きながらえさせる作用がある。また、免疫反応により痛みや熱がからだ全体に及ぶようになると本来の機能をうまく働かせる事ができず危険を生じる場合もある。コルチゾールの抗炎作用は「諸刃の剣」ともいえる炎症を抑え、体の機能をうまく維持させる事ができる。

3.ストレスが長期化すると、「細胞の分解」が起こる

しかし、ストレスが長く続くと副作用が現れる。タンパク質の分解作用だ。体の中でコルチゾールの量 が多くなると、細胞と細胞を接着する結合組織が弱って、傷口がふさがらなくなる。何しろコルチゾールは、体のタンパク質をブドウ糖に作り替える作用がある。ブドウ糖をせっせと作り出すために、原料である自分の体を食べてしまっているわけだ。

この影響は、傷口の治りを遅くするだけではない。胃や腸の粘膜細胞が弱り、潰瘍が生じたり、細菌を殺す際に活躍する免疫細胞の力を弱めてしまう。結果 的に胃潰瘍や動脈硬化および癌などにかかる恐れが出てくる。

結局、ストレスが過度で慢性的な場合は、アドレナリンやノルアドレナリンおよびコルチゾールの放出が長時間かつ過剰に起こると、高血圧、高血糖、消化管の潰瘍などが起き、さらには動脈硬化が進行し、やがては虚血性心疾患、脳血管障害などのさまざまな障害を生むことになる。
(図解雑学ストレス 渡辺由貴子・渡辺覚 ナツメ社/心と体の対話 神庭重信 文藝春秋より抜粋)